初めての自分の車

お付き合いを始めて、ほとんど毎日一緒にいるようになった。仕事が終わったらママの店か他の店か自宅か。夜は私の家で一緒に過ごし、朝早くに彼は帰っていった。



9月の初めの頃、仕事中に彼からメールが来た。「目当ての車、落札できたよ!」と。

それから契約の手続き、役所系の手続き、車の整備等々すべてをお願いした。私の手元に初めて車が来たけれどそれまで私は何一つ自分ではやらずに車だけが届いた。多分、普通は車を買う際にはそれなりに自分で手続をすることがあるんだろうと思うけれど、何もする必要がなかった。

それからしばらくして車が届いた。「納車祝いしなきゃ!」とママの店ではない、二人でよく行く店で納車祝いをした。「シートも全部外して高圧洗浄かけたよ。あと、空気清浄機もつけた。ナビはついているし、後はETCだね。ワイパーも替えておいたし整備は完璧!」とのこと。



その翌日から、私の足はその車になった。



9月の末。彼から「温泉に行かない?」と提案があった。行き先は山梨石和温泉
金曜日の仕事中、彼からメールが来た。「宿取れたよ!帰りに山梨の本買っていくからね。」仕事から帰って、店で翌日の計画を立てた。



翌日、朝早くから山梨へ向かう。川崎にいた頃にも何度か行ったことがあったけど、川崎から山梨はすぐだった。でも地元からはとても遠かった。。。でもそんなことは言えない。
山梨に着いて最初の目的「ほうとうを食べる」。川沿いのお店でほうとうを食べ、その後どうしようか、本を見ながら考えた。地図を見ていたら足湯がある。足湯に入りに行こう。そしてその途中にはワイナリーもあって、見学してもいいかもね。なんて話しながら移動。ワイナリーは見つけたけれどとても混んでいて入れる様子がない。諦めて足湯に入りに行った。

「俺、足湯好きなんだよ。行先で見つけると必ず入るの」とのこと。ゆっくり足湯で温まってから宿へ荷物を置きに行った。



宿で夕食をとった後、「外に飲みに行こう」と連れだされた。こういう温泉旅行はしたことがなかった。温泉に入って旅館に泊まってだけだと思っていた。近くの居酒屋でワインとつまみを食べていろんな話をした。まだ付き合いを始めてひと月。でも、ずっといっしょにいるせいかそんな時間の短さを感じることは少なかった。
最初の店を出てタクシーの運転手が話し込んでいるところへ入っていき、地元の居酒屋はないのか聞いた。親切な運転手さんが行きつけの居酒屋に電話をしてくれ、そこまで連れて行ってくれた。
そのお店は本当に地元向けの地味なお店だったけど、常連さんが教えてくれたおすすめの料理を食べたり、マスターの出身地の話を聞いたりしてとても楽しい時間を過ごした。




そして、彼は「いつもはみんないるから歌えないけど、お前の為に歌いたい歌がある」って、藤井フミヤの「夜明けのブレス」を歌ってくれた。聞いていて涙が出そうだった。
これまでいろいろな恋愛をしてきて結婚までしたけれど、私を大切に思ってくれた人、そして私が「大切にされていて幸せ」って実感できた人って少なかった。この彼は本当にいつも私を一番に考えてくれていると感じたし、いつも大きく包んでくれている気がした。



翌日、小さなワインショップへ寄って、道の駅に寄って、地元のおみやげを買いママの店に帰宅。