電波 & アンテナ


金曜日、友人に誘われていたホームパーティに彼を誘っていたのに、朝のおはようメールから結局一度も連絡が来なかった。こちらは待っていたのでずっと携帯を気にしながらの参加になっていて、主催者も『連絡ないの?来ないのかな?』とずっと気にしている様子。その分の食べ物も残しておいてくれていた。



彼は会社での送別会に駆り出されていたようで、そういう時は普段も連絡がつかなくなる。どんな状態なのかは知らないけれど下っ端だから仕方がないのかなぁ。
土曜の朝になって『申し訳ない』と電話があった。
そして、週末だから逢えるだろうと楽しみにしていたのに『後輩からお誘いメールが来てんねん』と言う。『でもな、昨日いっぱいのんで二日酔いやねん。もう一度寝てから考えるわ〜。またな〜。』と電話が切れた。お昼の話。




結局・・・土曜日はそのあと電話がなく、私はずっとずっと電話を待ったまま一日終わってしまった。その間、電話とメールを1回ずつしたのだけど、両方とも返事がなかった。



そんなことがあって日曜日。耐えきれなくなった私は『彼の家に行ってみよう』と思い立つ。それは直感的な思いで、そう思ったらすぐに支度をして家を出た。10時ごろの話。



電車の中でいろいろ考えた。



これが天邪鬼君だった場合。家にいないか、朝帰りで鉢合わせになるだろうな。。。わざわざそれを見に行く?もし同じようなことが起こったらどうするの?そこで喧嘩する?またあやふやにして許してしまう?



そんなことばかり考えてしまった。



駅について、一緒にべられるようにパンを買う。そして彼に電話をしてみた。彼の地元駅についたら連絡しよう。って思っていて、ずっと電話を我慢していた。



『電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません』



え? ・・・天邪鬼君と同じことが起こるの?



一気に気持ちも暗くなり、ドキドキし、涙が出そうだった。
駅地下で買ったパンを持って、駅の外に出て歩きだそうと思って向きを変えたら



・・・彼がいた。こっちを見ていた。
え?なんでここにいるの?・・・・朝帰りなの?!と思って言葉に詰まった。涙をこらえていた。



彼は開口一番に『ごめんな』と。



『昨日も連絡できへんでごめんな。あのなぁ〜、携帯水没したねん。携帯、お亡くなりになりました。昨日、後輩との飲み会最中に、トイレであんたにメールしようと思ってん、メールしてたら落としたんよ。。。えらい出費やわぁ。でなぁ、いま手続きしてきたんよ。』



と、お亡くなりになった携帯を手に持っていた。



『あんたに連絡しようにも、電話番号分からへん。こいつが動かへん。しゃぁないから今日は家にいるしかないなぁって思っとったんよ。』



なんでここにいるのかとは聞かなかった。でも『あ〜、びっくりした。まだドキドキしてる』とつぶやいている。そして普通に私の荷物を自分の自転車に乗せ、家の方に向かって歩き出した。



そこで緊張の糸も切れた私はまた涙が出そうになり、今までの変な考えも現実にならなかった安心感と、こんなことを想わせる彼に苛立ちと怒りがこみあげてきて『連絡もないし携帯も繋がらないし、でも勝手に家に言ったら悪いかなぁ。とも思ったし。。。なんなのよ!』とぶちまけてしまった。
よく考えたらすべて私が勝手に想像して勝手にやっていたことなのに、彼は『そんなに怒らんでもいいやん。ごめんよぉ』と言って私を家に連れて行った。



どうしても逢いたいと思っていた私と、私に連絡の取りようがないと諦めていた彼
家まで行かずに駅で逢えるとはそれぞれの電波とアンテナが繋がったのだろう。ほんの30秒ずれていたらすれ違いだった。私は歩き、彼は自転車なんだから。。。



前に彼に電波の話を少しだけしたことがあったけれど『意味がわからん』って顔をしていた。
でもたぶん、彼との電波が開通したんだ。そう実感した。