甘ったれ君のこと




甘ったれ君とは最初お互いに好奇心だけで会う約束をしたんだけど

結局彼に一目惚れをされた状態になり、それから毎日電話とメール。

知り合ってから離婚するまでの1月半には数回しか会わなかったけれど

離婚を決心して引っ越すまでの後押しと言うか

彼氏と彼女の関係を抜きにして、いろんな相談に乗ってもらっていた。



引っ越し先の条件として

・今の天邪鬼君の住居から遠いこと

・今の職場に通勤できること

・収入の範囲内の家賃であり、かつゆっくりと生活できる空間であること



もともと甘ったれ君が住んでいる場所を基準にしたこともあるけど

それを考えると東京を抜けて、今のところが条件にピッタリだった。

それ以上都心に近づくと、とても家賃は払えない金額だし

いくら独りだからって1Rや1Kではイヤだし。

休みの日に不動産屋へ一人で出かけ、さっさと決めてしまった。



その部屋を決めた日の夕方。

甘ったれ君から連絡があったので『部屋、決めちゃったよ』と言うと

不動産屋まで迎えに来てくれた。

そのまま決めた部屋まで案内して『ここ!』と教えたら・・・



ここなの?・・・・そっか・・・。

なんだか複雑な顔をしていた。



上に書いた条件にぴったりなところを決めることができたし

なにしろ新しい生活を送れるわけだし、ウキウキしてたんだけど

甘ったれ君の様子がちょっとおかしいことも気付いた。



それから引越しをして、甘ったれ君は家に頻繁に来るようになり

私はそのうち甘ったれ君の家にも行けるだろうと思っていた。

でも、教えてくれる気配はない。



ある時、全く別の話から流れていったのですが

甘ったれ君はこんなことを言い出した。

『俺さ、地元大好き人間で、たぶん一生ここから引っ越したいと思わない。

ずっとそう思ってたし、今もそう思ってるんだけどね。

そしたら君がここに引っ越してきた。

なんかね、自分の人生の中に君がしっかり入り込んでしまった気がする。

このまま君とうまく行くならそれは何も問題ないんだけど

もし君と別れても、君が引っ越すまでここにいるわけで

君が引っ越してもそのことは変わらないわけで、一生覚えているだろうね。

君が悪いと言っているつもりは全くないんだけど、すごく複雑な気分なんだ。』



甘ったれ君の言うことに妙に納得してしまった。

私は何も考えずにここに引っ越してきた。

実はこの地は●●さん一族の地元で、私の住む建物も●●が付く。

隣のマンションの名前にも●●が入る。

向かいの駐車場も、歯医者も、小さな商店も、向かいの家も通りかかる家も

みんな同じ名前●●。もちろん彼の苗字も。

部屋を決める前に一度この地へ遊びに来た時、甘ったれ君の祖父母の家を教わった。

部屋を決めるとき、不動産屋が通った道とは違うルートだったので気付かなかったけど

私の家を出て一度角を曲がったところがその家だった。

150mしか離れていない。

そのときに聞いたのは、隣のビルは祖父母の持ち物でその裏のアパートみたいなのもうちのだ。と。

たぶん彼はそこに住んでいるんだろう。

今から行く。って家から電話があって、5分後には着いてしまうんだから・・・。

彼の実家は先日忘れ物を取りに行くと言って、一緒においで。と言われて教えてもらった。

家の前まではついていかなかったけれど、彼の『実家を教える』の意思表示だった。

私の借りた部屋の大屋は、ちょっと離れた親戚だった。



そして、彼が家を教える条件として言った。

『俺の家を教える時は俺と結婚を決めたとき。

その前段階になったら、ここ(私の部屋)は解約してこっちにおいで。

本当は最初から来て欲しかったけど、たぶん嫌がると思ったから言わなかった。

でも、俺は明日からでもいいんだ。』

そう言われて。。。。私は今すぐの同棲はできないから。と断ったのでした。

そんな決心もできないし、まだそんな月日も経っていないし。

なにより、続けていける自信も持てなかったし。

だったら、今のままでいい。と思って、結局家も知らないままです。



まぁ、その後で何度もそのことは話題に出て喧嘩にもなりましたけどね。